職人技

ピアニストにとって、本番で使用するピアノの鳴りや響き、ペダルのきき具合、ホールの残響など本番前にチェックしておきたい事は沢山だが、ピアニスト&作曲家の藤井一興氏はそれら以外にゲネプロ前に必ずチェックする事があるそうです。

通常ピアノの鍵盤の深さは約10ミリ、7~8ミリのところで音が出る仕組みになっていて、その7~8ミリが演奏を左右すると言う藤井氏はハンマーの戻り具合、鍵盤の弾力などを指先の感覚でチェックするのだそうです。

ゲネプロ前にピアノの癖をインプットし、頭の中で微調整、ゲネプロで確認する。更に聴衆が入ると音の吸収が違う為、それを想定して本番に望む。

藤井氏の奏でるピアノは何とも言えない柔らかさと甘さと透明感があり、色彩のグラデーションで異国へと導いてくれます。

藤井氏は「音楽において時はリズムでありテンポであり、一番身近なところでは鼓動でしょう。鼓動は生命の象徴であり、時の宿命は絶対に止められない事です。私は多くの作曲家から、最後まで生きようとする強さとエネルギーを感じます。私の音楽を通じて、その一部でも皆さまにお伝えできれば幸いです」と想いを語ります。

365日欠かすことのない音への追及と作品の洞察は藤井一興氏の生命の象徴であり、10ミリの鍵盤を自由自在に操る技術と耳はまさに職人技です。

昨年3月、念願叶ってエリザベート・レオンスカヤのピアノを東京文化会館で聴くことが出来ました。

32年ぶりの来日で一夜限りのオールシューベルト、CDでしか耳にしたことのなかった甘く華麗なショパンからは想像も出来ない、肉厚でとても深い音楽でした。

作品によって作曲家によってこんなにも変幻自在に変化するレオンスカヤの凄さに改めて感銘、終演後、ロシアまで行かない限り彼女のピアノを聴く機会はもうないと思うとサインも握手も頂いてしまいました。(*^_^*)

今年もどんな職人技とどんな音楽に出会えるのか楽しみです。

3月17日すみだトリフォニーのミッシェル・ベロフ、18日東京文化の藤井一興氏のリサイタルが待ち遠しい。。